朝ドラ『虎に翼』の第5週「朝雨は女の腕まくり?」で主人公の猪爪寅子の父・直言が「共亜事件」という汚職事件に巻き込まれ逮捕されてしまいます。
突然に降りかかった猪爪家の汚職事件に家族、寅子の周りの学生たちも翻弄されてしまいます。
物語の序盤の大きな見どころとなるこの汚職事件は実際に起こった「帝人事件」がモデルでは推測されています。
今回はその帝人事件の概要と、寅子の直言が逮捕されたように三淵嘉子の父・貞雄も逮捕されたのかについて見ていきたいと思います。
『虎に翼』の共亜事件とは?
その前に『虎に翼』で描かれた「共亜事件」について少し見ていきましょう。
ドラマで描かれている「共亜事件」とは、共亜紡績の株が高騰するとあらかじめわかっていた共亜紡績の重役や、大蔵省の官僚や大臣などが起こした汚職事件で、寅子の父・直言はその株取引の実務を請負い、賄賂を送った罪で逮捕されてしまいます。
モデルになった帝人事件とは
それではその「共亜事件」のモデルとなった「帝人事件」について見ていきましょう。
「帝人事件」とは1934年に起きた帝国人造絹絲株式会社の株式売買をめぐり政治家や銀行のその関係者を巻き込んだ汚職事件です。
帝人事件の概要
1927年に世界恐慌のあおりを受け、鈴木商店が倒産し、その子会社である帝国人造絹絲株式会社(帝人)の株式が台湾銀行の担保になります。
その後、台湾銀行の担保に取られていた帝人株を財界グループが買い戻したことにより、株価上昇により財界グループは大きな利益を上げます。
このことは通常の商取引のため、問題がないのですが、帝人株を得た財界グループの裏には株取引の口利きをした政治家がいるのではないかと新聞「時事新報」が報道します。
それに絡んで贈収賄と台湾銀行を巻き込んでの株不正取引が行われたのではないか、という大スキャンダルに発展しました。
その報道に伴い、台湾銀行、帝人の幹部、政治家など16人が相次いで検挙され、1934年には当時の斉藤実内閣は総辞職に追い込まれます。
反体制力によるでっちあげ事件だった?
この事件で起訴された16人は、裁判では最終的には証拠不十分で全員が無罪となります。
現在では当時の斉藤実内閣の反対勢力が当時の内閣総辞職を仕組んだ「でっちあげ」事件だったと考えられています。
直言のモデルである三淵嘉子の父・貞雄は逮捕されたの?
『虎に翼』の寅子の父である直言は汚職事件に関与したとして逮捕されてしまいます。
果たして彼のモデルである武藤貞雄は逮捕されたのでしょうか?
帝人事件に関与したとされた台湾銀行のエリート職員であった武藤貞雄。
彼が逮捕されたという事実は見当たりません。
帝人事件により台湾銀行の幹部が逮捕されているため、三淵嘉子の父・貞雄とその周りにはそれなりの影響があったとは想像されます。
そしてもしかしたら三淵嘉子自身にもこの帝人事件により、彼女の法についての関わり方には影響を与えた事件だったのではないでしょうか。
まとめ
今回は『虎に翼』に描かれている共亜事件について深掘りして見ました。
- 共亜事件のモデルになった実在の事件の帝人事件とされている
- 帝人事件により台湾銀行の幹部が逮捕されているが、三淵嘉子の父・貞雄は逮捕はされていない
史実とは少し違った形で取り上げらている共亜事件ですが、上手にドラマでは描かれていて、今後の主人公・寅子の法に対しての考え方に影響を与えそうな事柄ですね。